ゲド戦記X アースシーの風     ル・グウィン著  清水真砂子訳 



ゲド戦記の第5巻(原題「The Other Wind」)です。
第4巻「帰還」の副題には、シリーズ最後の書、と銘打ってあったのですが(原題「TEHANU ― The Last Book of earthsea」)、
それを覆しての物語でした。
4巻と5巻の間には11年の歳月が隔たっているのですが、本書によって、ようやくテハヌーとは何者であるのか、という謎が明かされました。
ロークの学院のはじまりについて、また、竜と人間との古くからの歴史と伝説について、かつてゲドとレバンネンが生きたまま旅した石垣の向こうの世界について語られます。


ゲドのもとにハンノキがやってくるところから物語りははじまります。
ハンノキは、死に別れた妻が夜毎、ハンノキに助けを求め、さらには見も知らない大勢の者達までもが石垣のそばまでやってきて、自分にすがろうとするという悪夢に悩まされ、助力を請いにロークの学院をたずねました。
彼は、そこでかつて死者の国を旅した大賢人のもとへ行くよ勧められます。
自分の持てる力の全てを出し切って、いまや何の力もなくなってしまったゲド。
彼はハンノキが王レバンネンに会えるよう、取り計らいました。
ちょうどその頃、テナーとテハヌーも王に相談をもちかけられてハブナーに滞在していました。
夢が引き寄せる「石垣の世界」と人間の世界を襲うようになった「竜」、異文化の国「カルガド」の死生観などがからみあって物語が進行していきます。
そして、テハヌーは。

      見ましたよ、テハヌーを。
      あの方は黄金のように輝いて、もうひとつの風に乗って、空を飛んでおられます。


       ――― 「あの子がもし来るとしたら、あの辺からだろうな」 「もし来なくても、あの子はあそこにいるよ」


テナーはル・アルビの村をぬけ、ゲドのもとへと帰り、物語は幕を閉じました。
このあとは、外伝の形で刊行されるようです。
「Tales from Earthsea」というのがそれで、こちらには4巻と5巻をつなぐ橋渡し的な物語など5つの短篇とアースシー世界の解説が載せられているそうです。
邦訳が出版されるのはいつになるかわかりませんが、こちらもぜひ読んでみたいと思います。

ゲド戦記は、全体を通して、「魔法と冒険」といった単純なストーリーでなく、登場する人々の心情などが細かく描写されていて、「子供向け」とするにはちょっと難しいかな?という気がします。
大人になって改めて読み返してみると、それまでわからなかったことが見えてきて、更に物語の世界に引き込まれて行くような気がします。
子供の時には子供なりに読んでいるんでしょうけれどね。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送