妖精王の月           O.R.メリング 著  井辻朱美 訳 


主人公はカナダ人のグウェン。
彼女は母方のいとこ、フィンダファーに会うためお金を貯めてアイルランドにやってきた。
ともにずっと胸に秘めてきた、ファンタジー世界への「探索の旅」に出るために。
そして<人質の墳墓>で夜を明かした――塚の中で眠ることは、妖精界に自らを明け渡すということだったのに。

  「そなたの答えがノーでも、彼女の答えはイエスだ。わたしは<人質の墳墓>から花嫁を連れて行く」

妖精王フィンバラは、フィンダファーを連れて去ってしまった。
翌朝からグウェンの、フィンダファーを取り戻す旅がはじまるのだった。
妖精たちとの出会いや助言に助けられながら。
しかし、旅を進めて行くに連れて、グウェンの立場は微妙なものになっていった。
妖精王はグウェンをも妖精国に取り込もうと、あの手この手で誘惑してきたのだった。
ついにグウェンは、妖精の国のすばらしいごちそうに惑わされ、食べ物を口にしてしまった。
もとの世界に戻るためには「食べてはいけない」と警告されていたのに。

  フェアリーランドにまつわる危険も決定の意思も、フィンダファーに属するものだった。あたしじゃない!
  彼女の狼狽に輪をかけたのは、イエスと言ってしまいたいという、内なるひそかな執拗な叫びだった。


グウェンは、身体は人間の世界にあっても心は妖精国にあり、ふたつのあいだをあっちへこっちへと引っ張られ、世界の裂け目にはまり続けるという羽目に陥っていたのだった。
どうやってこの事態を乗り越えるのか。


とても面白かったです。一気に読んでしまいました。
訳者あとがきに、ケルトの妖精について書かれたファンタジーについてふれられています。
その中で私が読んで面白かったのは、「妖精王」(山岸涼子)、「クリスタルドラゴン」(あしべゆうほ)、「コルム・シリーズ」(M・ムアコック)かな。
ケルトの民話世界の魅力は、ファンタジーの想像の翼を広げて、さまざまな物語を生み出すインスピレーションを与え続けているんですね。


  

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