ゲド戦記 最後の書   帰還   アーシェラ・ル=グウィン 著  清水真砂子 訳


第三部で力を使い果たしたゲドは、竜に乗って生まれ故郷のゴントに帰ってきました。
彼の師オジオンの元には テナーがいました。
テナーは 普通の女が生きるように、結婚し子を産み、夫に先立たれた後は後家として 家事や畑仕事をして暮らしていました。

ある時テナーは 身内とその仲間に乱暴され、火の中に投げ捨てられた子供 テルー(テハヌー)を引き取ります。
ゲドとテナーの師、オジオンは「教えてやってくれ。あの子になにもかも教えてやってくれ―」と言葉を残して亡くなりました。
その後、ゲドがテナーの元へ帰ってきます。

しかしゲドは 深く傷つき、疲れ果て、大賢人としての力も全て失って、すっかり自分自身への希望をなくしてしまっていました。
燃え尽き症候群というか、仕事一筋だったのが定年退職して気力をなくした「オヤジ」というか、
テナーには、いつだって「力」のことしか頭にないのか、と思われたりもしています。
後には「普通」の「男」と「女」として暮らしていくことになるのですが。

王が誕生して、なにもかも良くなった、と思われたのに、テナーとテルーの周りには不穏な輩が出没するようになり、ついにはテナーは邪な魔法使いから呪いをかけられてしまいます。
それを助けたのは、他でもない。竜の言葉を話すテルー(テハヌー)でした。


この最後の書は、正直いって対象年齢「6年生・中学生以上」というには難しすぎるんじゃない?と思いました。
子供とはいえ、読解力はあなどれないとは思うけど・・・男と女の力、フェミニズムの問題、差別、などなどちょっと難しいだろうな、と感じました。
大人になって、特に結婚したり子供を生んだ後に、もう一度読んでもらいたいと思います。

テナーの思い『なぜ男は女を束縛するさまざまな事態に無頓着でいられるんだろう。
子どもが眠っている時は、誰かがそばにいてやらなければならないのに。
ひとりの人間が自由でいるためには、もう一人の人間は不自由でいなくてはならない。
もしも、今自分がしているように、2本の足をあえず交互に動かして前進しながら、バランスをとることができないのならば。』
この言葉に、妙に共感を覚えてしまいました。
婉曲な表現も多くて難解ではあるけれど、深く考えさせられます。
もちろん、冒険物語の締めとして 単純に楽しむ事もできるだろうけれど。

邦訳はされていないけれど、ゲド戦記 第5部が外伝として発表されているそうです。
お願いします〜〜岩波書店さ〜ん。早く邦訳してくださいね〜。


  

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