さいごの戦い   ナルニア国ものがたり7   C.S.ルイス 作  瀬田貞二 訳


「終わりのない世界はない」――ナルニアもまた然り。
ナルニアにもとうとう「終わりの時」がきます。

カロールメン人に捕らえられたチリアン王を助けに、ユースチスとジルがナルニアにやってきました。
続いてディゴリー、ポリー、ピーター、エドモンド、ルーシィ、かつての王や女王だった人もやってきました。
スーザンだけはきませんでした。
スーザンのことについては、ナルニアの仲間である7人がそれぞれ苦々しい感想を持っているようですが、なかでもポリーの言葉は現代の若者への言葉を示唆しているようです。

「スーザンには、ほんとうにおとなになってもらいたいものね。
あの人は、今の年くらいに早くなりたがって、学校に通っているころを台無しにしてしまったし、また、今の年のままでいたくて、これから先の一生を台無しにしてしまうでしょうよ。
あの人の思うことといったら、できるだけ早く一生のうちで一番ばかな年頃になりたがって、できるだけ長くその年頃に留まりたいということなのよ。」

また、このナルニア最後の場面は、キリスト教の「黙示的予言」に基づいて書かれているそうです。
アスランを敵とし、タシ神を求めてきたカロールメンの王子エーメスに、アスランは語ります。

「タシと私はひとつではなく、全く反対だからこそ、タシにつくすほんとの信心は、わたしに通じるのだ。
なぜなら、わたしとタシは全く別であるから、よこしまな信心がわたしに向けられる事はなく、よこしまならぬ信心がタシに向けられる事はないのだ。―後略―」

アスランの偽者を使って騙された、と知った小人たちは、もはや真の救い手であるアスランも信じることができず、「小人たちは小人たちだけでやっていくさ」と頑なに心を閉ざしてしまいました。
信じていないので目にも見えず、救いの手にも気づく事がないのです。
ごちそうを前にして、それを食べているにもかかわらず、小人たちにとってはそれは、ただの干し草であり、古くなった野菜でしかなく、赤々としたぶどう酒を手にしていても、汚いかいば桶の汚れた水としか思えない。

「小人達はわたしの助けが欲しくないのだよ。かれらは、信じる代わりにずるくやるたてまえだ。小人達が閉じ込められているところは、ただ小人たちの心の中だけだが、そこにいまだに閉じこもっている。
また、騙されるのを怖れているから、助け出されることもない。こもっているから、抜け出せないのだ」

ナルニア物語の最終巻は、やはり作者の伝えたかった事がいたるところに暗示されているなーと感じました。
物語の最後の最後で、妙に現実的になって、ちょっと違和感がのこったけれど、それでもこの壮大な物語は、ぜひこどもたちに読みついでいってもらいたいと思います。

  
  

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