ローワンと魔法の地図   エミリー・ロッダ 著  さくまゆみこ 訳 佐竹美穂 絵


主人公の少年ローワンは、リンの村で家畜であるバクシャーの世話係をしていた。
偉大な戦士であった祖先を誇りに思い、何よりも勇敢である事が重んじられているリンの村で、ローワンは浮いた存在だった。
内気で、自分の影にだってびくつく子供だと周囲から思われていて、また、実際そうだったからだ。
勇敢だった父親が、火事で燃え盛る家の中から幼いローワンを助けるために命を落としてからは、ローワンは余計に内気で怖がりになっていた。

そんなローワンの住むリンの村で、ある日突然川の水が枯れて、バクシャーたちは水が飲めなくなる。
井戸の水には塩分が混じっていて、バクシャーの飲み水には適さないのだ。
がいると言われている禁じられた山に登り、川の流れをせき止めている原因を探り、それを除かねばならない。
勇敢な6人の村人が名乗りをあげた。
しかし、助言を請うた魔女シバによって、ローワンが触れたときにしか見えないように地図に魔法をかけられたために、ローワンが道案内をすることになってしまった。
周囲からは足手まといと思われ、未知なるものの恐怖にふるえながらも、ローワンは大切なバクシャー、スターの苦しみを思い、いっしょに行く事を決意する。

竜、洞窟、何百万もの蜘蛛、底なし沼、魔法の地図、そして意味深な魔女の予言・・・
   
    七つの心が旅をする   七つの道で心はくだける ・・・・・

予言どうりにひとり、またひとり、と仲間が欠けていく。
果たしてローワンは、この困難の道を乗り越え、山の頂上にたどり着けるのか。

ドキドキわくわくさせるファンタジーの要素、スピード感のあるストーリー展開で、一気に読んでしまいました。
内気で臆病な少年が困難を乗り越え、ついに村人も大切な家畜も救う、という物語ですが、訳者あとがきによると、さらにこの物語の新しさは、「ジェンダーを超えた男女差のない社会が描かれている」点にあるといっています。
従来の「男の役割」「女の役割」「男らしさ」「女らしさ」にとらわれず、それぞれの個人がその人にふさわしい役割を果たしていく社会。
それが作者のひとつの理想として描かれています。

この作品がオーストラリアの最優秀児童図書賞を受賞し、子供たちが夢中になって読んでいる、というのもうなづけます。

  
  

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