ハプスブルクの宝剣 (上・下)          藤本 ひとみ 著       


18世紀初頭のヨーロッパ。
当時 ユダヤ人はどこの国においてもユダヤ街に隔離され、社会から疎外された存在でした。
そんな中で、比較的差別の少ないイタリアの大学で学んだユダヤ人青年 エリヤーフー は、自ら心を開き、閉鎖的なユダヤ人社会を変えていけば、他の民族からも理解を得られ差別をなくせる、との考えから、ユダヤ経典のドイツ語訳を完成させます。
しかし、その行為は異端とされ、非難を受ける結果にもたらしました。
また、地元の有力者の令嬢をめぐって決闘事件を起こした際に、片目を失うという事態に陥ってしまいます。

その彼の窮状を救ったのは、後に女帝マリー・テレーズの夫にして神聖ローマ帝国皇帝となるフランツ・シュテファンでした。
オーストリアを支配し、代々神聖ローマ帝国皇帝を継承してきたハプスブルク家は、キリスト教を擁護する立場にあり、ユダヤ教を排斥してきました。
主人公エリヤーフーは、ユダヤ教を捨て、名前も エドゥアルド と変えて、フランツと共に生きていく事を決意します。
オーストリア人になりきって生きるために 乗り越えなければならなかった様々な苦難が、結果的にはエドゥアルドを「ハプスブルグの宝剣」とまで称される人物に仕立て上げていきます。

自分の力で前途を切り開いて行こうとする大胆な行動と、自分自身の生き方について深く悩む主人公。苦難と挫折を繰り返しながらも真実を見出していく姿に、ひきつけられます。
文句なしに面白く、読み応えのある作品だと思います。


なお、「マリー・アントワネットの生涯 (中央公論社)」では、この物語の背景になっているハプスブルク家の、マリー・テレーズとフランツ、そしてマリー・アントワネットことが更に詳しく書いてあります。
本書を読んで、この時代やハプスブルク家の事に興味がわいた、という方は ぜひご一読を。



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